2014年11月13日木曜日

インクジェットによる印字の大型枚葉紙への展開

インクジェットによる印字の大型枚葉紙への展開

<顧客の課題>
加工済みの製品への印字でスタートした弊社のインクジェット事業であったが、元々の弊社の事業領域である大型枚葉紙への展開の対するソリューションとしての活用を求められるケースが次第に増えて行った

・バーコード(1次元バーコード~QRなど2次元バーコード)
・コンサート会場などの座席番号(1階12列22番 etc
・宛名印字などDMへの応用
・携帯キャンペーンなどに用いられる「乱数」印字
・地図などビットマップ情報による差替え印字
・全国に展開するチェーン店などで1店舗毎の使用数が異なる刷込み
・記号や発行数量が多種に渡るナンバリング

従来もこうした「課題」に対するソリューションとしてプリンターが用いられていたがビジネスフォーム+漢字プリンターという流れが主流となっていた

この流れで業務を処理する為には元刷りをビジネスフォームで製造することが必須となり、そうなると

・用紙の種類・厚さ・用紙寸法が制限される
・カラー印刷の品質、色数、後加工の種類などが制限される(当時)
・社内のリソースが活用できない(枚葉のオフセット印刷機が使えなくなる)

などの「制約」が発生し、「何とか従来どおりに枚葉のオフセット印刷機で元刷りをして上記の特殊な印字内容に対応できないか?」という要望が慢性的に存在していました

<ゑびす堂の対応>

枚葉紙+プリント(レーザー、インクジェット)は現代では最も先進的なシステムとして開発競争の最重要課題になっていますが、当時は昭和情報機器のA4への追刷が出来る機種があった程度でドキュテック等はまだ存在していませんでした。当時、A4に4面付け、バーコード印字7000ページという内容の依頼を受け、メーカーに相談したところ数時間で対処できるという事だったので、台紙をオフセット印刷で製造し、A4に仕上げてメーカーショールームに持ち込みました。ところが数時間どころか一晩掛かっても刷了せず大変困りました。

用紙がコート紙であったことも災いした様子でしたが、予想以上にジャムったり不正給紙したり、レーザープリンターが好まない紙粉などによりしばしメンテナンスが必要になったりで、このような用紙に関してはカタログスペックでは運転できないという事が確認できました、当時の搬送系はコピー用紙のような用紙用途であって、オフセット印刷した後の癖の着いた用紙への対応を考慮して設計されていなかったからだと思います。こうした事例を積み重ねた結果、

「しっかりした搬送系を備えた大型枚葉紙に対応するプリンター」に可能性があることを実感しました

プリントする原理として代表的なのはレーザー方式とインクジェット方式ですが、既存の搬送系に組み込むことを考えると非接触式のインクジェットの方が有利で、何よりも弊社では既に折加工済みの製品への印字手段として1インチヘッドを2つ所有していましたので、新たに搬送系を設計し、ここに1インチヘッドを2つ組み込んだ形のインクジェット印刷機を完成させる事を試みました。こうした応用は国内では初めてであったはずです

実はこうした試行錯誤をしている頃、アメリカのチェックテクノロジー社の菊2切サイズでも後刷り可能なレーザープリンターが日本に上陸したことがあります。非常に魅力的な完成した機材ではありましたが、トナー等のランニングコストが気になりました、従来活版印刷機のよるナンバリングに関してはインク代ほぼゼロに近かったので、この点において従来の受注価格のままではそもそも成り立たず、「これで活版印刷機を捨てられます」というメーカーの説明のようにはならないだろうと思われました、インクジェットはこうしたランニングコスト面でも有利でした。

その後もデジタル印刷のランニングコストの高さはオフセット印刷の単純な置き換えにならない1つのネックになっています。デジタル印刷が既存の技術と競合しない分野として「バリアブル」への対応を掲げるのはこうした背景があると思われます。今後、もしインクの使用を抑えたランダ社のナノテクノロジーやMemjetなどがこうした面をカバーしていくなら、こうした制約も何れは外れバリアブルに限らずプリンターがカバーする領域は増えていくかもしれませんが現時点ではまだそこまでには至っていません

弊社のプリンターは、スタート当初のスペック
・最大用紙サイズ:菊2切
・印字ヘッド:1インチ×2列
何度かのアップグレードを経て現在は
・最大用紙サイズ:A全
・印字ヘッド:4インチ×2列
になっています

https://www.youtube.com/watch?v=BxQsKrZKVmQ

<満足ポイント>
オフセット印刷機+枚葉インクジェットによる追い刷りは様々なメリットがあります

・ビジネスフォームに頼らず「バリアブル」印字ができる
・用紙サイズ、用紙厚さの対応範囲が広い
・ドキュテックなレーザー系に比べてランニングコストが安い
・生産性が高い
・「課題」に挙げた従来のナンバリングでは実現しえなかった幅広い「バリアブル」に対応できる


例えば、名刺サイズで乱数入りスクラッチカードを製造する場合

・印字 菊2切 40
・スクラッチ加工 菊2切 40

とうような進行が可能になります。菊2切に関しては2ラインあるので、日産50,000シート程度の印字が可能(小数200万枚)となり、コストの掛かるスクラッチ加工を菊2切で行える事もプラスし、生産性・コスト共にドキュテックなどA4切系の機材に較べ断然有利です。仕上がりA4ならA8面での印字も可能です。